300万円で買って、月5.5万円で貸す。
表面利回りは22%です。
では、この投資で本当に年間22%儲かるのでしょうか。
今回は、リフォーム費、空室、修繕、そして「自分自身の時給」まで数字に入れて考えてみます。
この記事の結論
地方の格安戸建ては、物件価格だけを分母にすると非常に高い利回りになります。
しかし、総投資額・空室・運営費・自分の作業時間まで含めると、見える数字は大きく変わります。
今回の架空物件では、表面利回り22%が、時間まで考慮すると約9.2%になりました。
※この記事の物件・金額は、考え方を説明するための架空例です。
今回検証する架空物件
まず、前提条件を置きます。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 物件価格 | 300万円 |
| 月額家賃 | 5.5万円 |
| 年間満室家賃 | 66万円 |
| リフォーム費 | 100万円 |
| 購入諸費用 | 30万円 |
| 想定空室率 | 5% |
| 年間運営費 | 12万円 |
| 購入〜客付けまでの作業時間 | 80時間 |
| 年間の管理・修繕対応 | 15時間 |
| 自分の想定時給 | 5,000円 |
最初に広告だけを見ると、
66万円 ÷ 300万円 = 22.0%
です。
利回り22%。
数字だけを見ると、とても魅力的に見えます。
300万円では貸せない
築年数の古い地方戸建てであれば、買ったその日から家賃5.5万円で貸せるとは限りません。
今回は、リフォームに100万円、購入諸費用に30万円かかるとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 300万円 |
| リフォーム費 | 100万円 |
| 購入諸費用 | 30万円 |
| 総投資額 | 430万円 |
総投資額に対する年間満室家賃の割合は、
66万円 ÷ 430万円 ≒ 15.3%
です。
22.0% → 15.3%。
広告上の表面利回りと、実際に貸し出せる状態まで持っていった投資額ベースの利回りには、かなり差が出ます。
年間66万円がそのまま利益になるわけではない
次に、空室と運営費を入れます。
空室率を5%とすると、実効家賃収入は、
66万円 × 95% = 62.7万円
です。
さらに固定資産税、火災保険、軽微な修繕などを年間12万円とすると、
62.7万円 − 12万円 = 50.7万円
となります。
借入を使っていないと仮定すれば、税引前の年間キャッシュフローは約50.7万円です。
総投資額430万円に対して、
50.7万円 ÷ 430万円 ≒ 11.8%
となります。
22.0% → 15.3% → 11.8%。
それでもまだ高い数字です。
しかし、ここでも一つのコストを0円として扱っています。
自分自身の労働です。
自分自身の労働は本当に無料なのか
地方戸建て投資では、購入して終わりではありません。
たとえば、
- 物件を探す
- 現地まで見に行く
- リフォーム箇所を確認する
- 複数の業者に見積もりを取る
- 工事内容を調整する
- 完成後に現地確認する
- 仲介会社と募集条件を決める
- 給湯器・エアコン・水漏れなどの連絡に対応する
- 退去後の修繕を手配する
といった作業が発生します。
もちろん、すべて外注することもできます。
ただし、自分で行えばお金がかからない代わりに、自分の時間を投入することになります。
ここで、不動産から得られた収益と、自分が大家として働いた対価が混ざり始めます。
自分の時間を時給5,000円としてみる
購入から客付けまでに80時間使ったとします。
自分の時間を時給5,000円と評価すれば、
80時間 × 5,000円 = 40万円
です。
さらに、購入後の管理・修繕対応に年間15時間使うとすると、
15時間 × 5,000円 = 7.5万円
です。
これは誰かに実際に支払うお金ではありません。
会計上の費用でもありません。
ここでは、その時間を別の仕事・勉強・休息・家族との時間などに使えたはずだという機会費用として考えます。
「時間調整後CF」で見てみる
ここでは記事内の便宜上、
時間調整後CF = 年間CF −(年間投入時間 × 自分の時給)
という指標を置きます。
これは一般的な不動産投資指標ではなく、この記事独自の考え方です。
年間CFは50.7万円。
年間の時間コストは7.5万円なので、
50.7万円 − 7.5万円 = 43.2万円
です。
さらに購入時の80時間=40万円も初期投資として考えると、
430万円 + 40万円 = 470万円
です。
したがって、
43.2万円 ÷ 470万円 ≒ 9.2%
となります。
同じ物件でも、何をコストとして含めるかによって、22%にも9%にも見えます。
「22%」という数字が間違っているわけではありません。
問題は、その数字が何を表しているのかです。
年間家賃66万円は、どう減っていくのか
年間のキャッシュフローだけ取り出すと、次のようになります。
| 段階 | 年間金額 |
|---|---|
| 満室家賃 | 66.0万円 |
| 空室5%を考慮 | 62.7万円 |
| 年間運営費を控除 | 50.7万円 |
| 時間コストを控除 | 43.2万円 |
表面利回りだけを見ていると、最初の66万円しか見えません。
投資判断では、最終的に自分の手元に何が残るのかを追いかける必要があります。
問題は「何時間使ったか」だけではない
ただし、時間を金額換算すればすべて解決するわけでもありません。
年間15時間の作業でも、毎月決まった日に1時間ずつ作業する15時間と、休日の朝に突然入居者から電話が入り、その日の予定を変えて対応する15時間では、負担が違います。
大家業の面倒さは、単なる作業時間だけではなく、「いつ発生するか分からない仕事」であることにもあります。
給湯器が壊れるタイミングを選ぶことはできません。
水漏れの連絡が来る時間も選べません。
この不確実性は、時給換算だけでは表しにくいコストです。
DIYすると、本当に得なのか
たとえば、業者に頼むと100万円かかるリフォームを、自分で70万円に抑えられたとします。
一見すると、30万円得しています。
しかし、DIYに100時間使っていた場合、自分の時給を3,000円とすれば、
100時間 × 3,000円 = 30万円
です。
経済的には、30万円の工事費を節約するために、30万円分働いたとも見ることができます。
もちろん、DIYそのものが好きなら話は別です。
趣味として楽しめるのであれば、時間をすべてコストとして扱う必要はありません。
問題なのは、
自分でやったから無料だった
と考えてしまうことです。
無料ではなく、お金の代わりに時間を投入しています。
DIY中心と完全外注を比べる
| 項目 | DIY・自己対応中心 | 外注中心 |
|---|---|---|
| 現金支出 | 抑えやすい | 増えやすい |
| 自分の作業時間 | 多い | 少ない |
| 表面上の利回り | 高く見えやすい | 低く見えやすい |
| 突発対応 | 自分に来やすい | 委託先に寄せやすい |
| ノウハウ | 身につきやすい | 外部に依存しやすい |
| スケール | 時間が制約になりやすい | 資金が制約になりやすい |
ここで重要なのは、「どちらが正しいか」ではありません。
投資収益を最大化したいのか。
自分の労働も含めた総収入を増やしたいのか。
手離れを良くして時間を確保したいのか。
目的によって評価は変わります。
そして最後に「出口」がある
ここまででも表面利回り22%はかなり違って見えました。
しかし、不動産投資にはもう一つ大きな数字があります。
売却価格です。
今回300万円で購入した戸建てを、10年後にいくらで売れるでしょうか。
- 300万円で売れる
- 200万円で売れる
- 100万円でしか売れない
- なかなか買い手が見つからない
どのケースになるかで、投資全体の収益率は大きく変わります。
特に地方物件では、「家賃が取れること」と「売りやすいこと」は別の問題として考える必要があります。
本当に投資として比較するのであれば、保有期間中のキャッシュフローだけではなく、売却まで含めたIRRなどで見る必要があります。
出口については別の記事で詳しく検証します。
高利回り戸建てが悪いわけではない
この記事は「地方戸建て投資はやめた方がいい」という話ではありません。
安く買える。
安く直せる。
十分な家賃が取れる。
空室期間が短い。
修繕費を抑えられる。
出口でも一定の価格が付く。
こうした条件が揃えば、高い収益性を持つ投資になる可能性があります。
重要なのは、「表面利回り20%」だけで判断しないことです。
購入価格だけではなく、
- 総投資額
- 空室
- 運営費
- 修繕
- 自分自身の時間
- 売却時の価格
まで一つずつ数字にする。
そうすると、その投資が本当に自分にとって魅力的なのかが見えてきます。
まとめ
今回の架空物件では、同じ地方戸建てでも、計算方法によって利回りがここまで変わりました。
| 見方 | 利回り |
|---|---|
| 表面利回り | 22.0% |
| リフォーム・諸費用込み | 15.3% |
| 空室・運営費込み | 11.8% |
| 自分の時間まで考慮 | 約9.2% |
一番考えたかったのは、不動産投資の利益と、大家として働いた対価を分けることです。
自分で動けば、現金支出を減らして利回りを上げることができます。
ただし、その分だけ自分の時間を使っています。
表面利回りを見るだけなら22%。
自分の時間まで含めれば約9%。
この差をどう評価するか。
そこからが、本当の投資判断です。
今回使った考え方
- 表面利回り
- 総投資額
- 空室率
- 年間キャッシュフロー
- 機会費用
- 時間調整後CF(本記事独自の指標)
- 出口戦略
次回予定
「利回りが1%違うだけで、物件価格は2,000万円変わる」
NOIとCap Rateから、不動産価格がどのように決まるのかを数字で考えます。